作業療法士について
1、作業療法士とは
理学療法士及び作業療法士法第2条には、「作業療法士とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行うことを業とする者をいう。作業療法とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせることを言う」とあります。
その作業療法を行う専門職はOTと略称され、理学療法士とともに、医学的リハビリテーションを行う者の身分として法的に認められたものです。
すなわち作業療法士とは、身体や精神に障害を持った人に対して、リハビリテーションによってその残存的機能を最大限に用い、その人が我われの住むこの社会の一員として、一定の義務を果たしながら同時に権利をも主張しうる立場の人間として生活できるよう援助する者のことであります。
現代の精神科治療は薬物による薬物療法と精神療法の二つに大別されますが、20世紀に入ってから作業療法の理療理論が見直され、精神療法の一つとして位置づけられました。
作業療法士の行うリハビリテーションによって、患者の身体の病的な部分に活力を与え強化し、その患者が一般の生活に耐えうる健康な心身能力を持てるようにすること。そして、最終的にその患者が社会復帰できるようにすること。作業療法士の行うリハビリテーションの目的がここにあります。
一人の人間は、人間として、尊厳あるものとして幸福なものとして、この世の中に存在する権利があるものと認識しております。例えそれがどのような精神的、身体的な障害であろうとも、人間は死ぬまでその権利を有している、またそのような社会であることが望まれると考えるのです。
それが人生の途上において、身体的あるいは精神的になんらかの障害を負うハメになったからといって、その人の人間としての尊厳性まで失われるようなことはないのです。どのような状態になったとしても、一人の人間として幸福に生きる権利が失われることはないのです。また、あってはならない。それが、私たち人間の住む社会であるべきであります。
ただ一方では、私たちの社会がそのようなものであるならば、そのためには、一人の人間の果たすべき責任が伴うということも事実であろうと考えます。フランスのサン・テグジュペリは、「人間であるということは、まさに責任を持つということ」と言っております。そして、さらに「人間であるということは“おのれの石を据えながら、世界の建設に奉仕していると感じること」なのであります。
すなわち、人間として他者にたいする責任を果たしながら、人間は、人間としての満足と幸福を、さらに充実感をも感じ取る生き物であるということであります。人間の生きる喜びがここにあります。ところが、心身になんらかの障害があっては、その達成は困難であります。ここに作業療法士の果たす役割の大きさとその資格があります。作業療法士の使命とリハビリテーションの目的は、一人の人間の尊厳性を確保するものであります。
2、作業療法士の行うリハビリテーション
作業療法士の行うリハビリテーションとは、障害を持つ方々が、その住みなれた地域で人々との関わりを維持しながらも、身体的精神的に独立した一個の人格を備えた人間として、幸福に、豊かに、生き生きと生活することが出来ることを目的として援助する総合的な支援体系を言います。
したがって、その具体的な方法は、さまざまな障害に対して訓練をすることによって改善し、あるいは残存機能を生かすことによって障害を補強し、その方々が普通の人間らしい生活を取り戻すことをめざします。
その対象は、乳幼児から老人までの身体や精神に障害のある人、またはそれが予測される人で、その領域は大きく4つに分類することができます。
1) 発達障害
人の初期段階の発達過程において何らかの原因によって、その発達が阻害されてしまった状態を言います。それは、人の認知、言語、社会性、運動などの機能において現れます。基本的には脳の機能的な問題が原因で起こるもので、知的障害、広汎性発達障害(自閉症)、高機能広汎性発達障害(高機能自閉症)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などがあります。その原因は、遺伝子異常、染色体異常、体内環境の異常、周産期の異常、生まれた後の病気や環境など様々です。しかし、多くの場合、その原因は不明です。
この発達障害を持った子どもに対しては、遊びを中心としたさまざまな作業活動を利用し、個々の子どもの発達問題や現在、また将来に渡っての生活を考慮した治療を行います。そして、障害があっても学校や家庭、地域でのびのびと生活できるよう指導、援助を行います。
2)、身体障害
身体障害とは、先天的、後天的に何らかの理由によって、身体機能の一部の障害を負っている状態を指します。手や足を失ってしまった、または動かないなどの肢体不自由や脳内の障害によって正常な手足の運動が出来ない脳性マヒなど。また、視覚、聴覚、心臓病、呼吸器障害なども広い意味での身体障害となります。
これら病気や事故によって身体に障害を負った方々に対しては、今後の生活のための問題点をよく把握し、さまざまな作業活動を用い治療にあたります。また、その方に残された残存機能を最大限に活用し、身辺の動きや家事、仕事への復帰をめざした訓練を行い、社会への復帰をめざすとともに、在宅の障害者やその家族が生活しやすいように指導、援助を行います。
3)、精神障害
精神障害とは、日本の法律では精神保健福祉法5条に、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又は依存症、知覚障害、精神病質、その他の精神疾患」とされています。そして、精神障害者とは、これら精神疾患を持つ個人を指します。
さらに、精神疾患とは、脳および心の機能的、器質的障害によって引き起こされる疾患を言い、これには統合失調症や躁鬱病といった重度のものから、神経症、パニック障害、適応障害といったような中・軽度のものまで様々な疾患を含みます。
これらの原因については、心因・外因・内因の3つに分けられますが、実際は複数の原因によることも多くあります。
これら精神疾患によってその生活に支障をきたした方々に対しては、通常、個別あるいは集団の形態で治療を行います。人として他の人たちと関わりを持つこと、また具体的で現実的な作業活動を行うこと、これらを通して精神機能の向上をめざし、その方が一人の人間として豊な心を取り戻し、よりよい生活が送れるよう指導し、援助を行うものです。
4)、高齢者
一般に高齢者とは、65歳以上の者を指します。しかしながら、この高齢という線引きは曖昧でかつ主観的な部分があって、その判断は容易ではないのが現実であるようです。例えば、同じ65歳という年齢であったとしても個人差はかなりあって、一方は若々しく、他方はすでにヨボヨボであったりすることが多々あるようです。
ちなみに、国連の世界保健機構 WHO などでは、65歳以上を高齢者とし、65歳~74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者、85歳以上を末期高齢者としております。
また、成人で一定の年齢以上になると職業から引退し、第一線から退いた人のことを高齢者と呼び、さらには、身体の不調が増え、徐々に死を意識し始める年代を言う場合もあります。
いずれにせよ、これら身体的にも精神的にも衰えをみせた高齢者に対しては、さまざまな作業活動を用い、治療、訓練を行います。また、高齢者によく見られる役割の欠如や生きがいの喪失、また引きこもりなどの心理的、社会的な問題に対して、その高齢者のおかれた環境の中で、より豊かに、生き生きと生活できるよう指導、援助をおこないます。