作業療法士の業務
作業療法士(OT)とは、「理学療法士及び作業療法士法」という法令で定められる国家試験の名称です。この法令では、作業療法士について次のように定めております。
[理学療法士及び作業療法士法]
第2条 2 「作業療法士」とは、身体又は精神に障害のある者に対して、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせることをいう。
第2条 4 「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行うことを業とする者をいう、とあります。
したがって、その行為は、社団法人作業療法士協会の定義によると、「身体または精神に障害のある者、またはそれが予測されるものに対して、その主体的な活動の獲得をはかるため、諸機能の回復・維持および開発を促す作業活動を用いて行う治療・指導・援助を行うこと」とされています。
2、作業療法士の業務内容
人によってさまざまな障害を抱えた方々に対して作業療法士は、その人が普通の生活を自信をもって送れるように指導・援助します。その根本は、その人に生きる自信を持ってもらえるよう、精一杯の“励ましをおくる”ことです。では、何をもってすれば、障害を抱えた方々に、その励ましをおくることが出来るのでしょうか。人はそれぞれ生きてきた環境も違います。その価値観も違い、考え方も人によってまちまちであります。目的は一つです。障害を抱えながらも自信をもって人生を送れるようにすること。ですが、その目的に至る過程・手段・方法は、人によって違います。それはまさに、千差万別であります。
そのため作業療法士は、治療の基礎となる医学を勉強するほか、心理学、発達学、あるいはさまざまな作業活動(手芸・陶芸・木工・織物など)を学び、その習得した知識・技術を用いて、その人に応じた治療の方法を経てその業務を遂行することになります。具体的には、その人の「生きがい」を見出し、「喜び」を発見し「自信」を深め、人生を前向きに生きる力を自らの内側に発見し、これから先のあらゆる困難に立ち向かえるよう訓練する。その過程そのものがリハビリテーションの目的とも言えます。
したがって、作業療法士は身体、精神に障害を持つ人または加齢に伴う不自由や痴呆症(認知症)など様々な人を対象に、生活上の動作を習得する練習や工夫を行い、身体の応用能力や社会適応能力の回復を図ります。また、職場復帰の準備を行ったり、手工芸などを使った指先と考える力をつける練習をすることもあります。
3、作業療法士の職場
人というものは、本来的に心と身体は一体の生き物であります。たった一つの動作を行うにしても、人はまず心を動かされ、次いでその現れとして身体が動いていくものです。そして、このどちらか一方に障害があった場合、人は困難を感じ不自由を感じ、その結果が心に還元されて不幸を感じてしまうものです。
作業療法士はそうした人たちの援助をし、再び生きることを促す仕事であります。
その作業療法には障害から区分した4つの分野があります。
ア、身体障害
イ、 精神障害
ウ 老年期障害
エ、発達障害
作業療法士の職場は、福祉の分野では肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、身体障害者施設、重度身体障害者更生援護施設などへの配置が規定されております。また、特別養護老人ホーム、老人デイサービスなどの老人福祉施設においても、その施設によって配置している場合があります。さらには、病院、リハビリテーションセンターなど医療分野が主な活動領域となります。
それらおいて作業療法士は、リハビリテーションの専門医やケースワーカーなど、他の専門職と連携を取りながら、食事や洗面などの日常生活動作訓練、職業に向けての作業訓練など、幅広い援助を行います。
4、作業療法士の人柄・人格
さて、この作業療法士について他の資格と若干違うと思われるのは、ただ単にその知識と技術を身につけ国家試験に合格すれば、その資格はもちろん貰えるのでしょうけど、実際の現場においては、それだけではたぶん仕事として十分ではないという点であります。
というのも、作業療法士が実際に現場で相対する人たちというのは、身体的、精神的に軽度、また重度の障害を負った方々であるからです。そういう方々に対して身体的なリハビリテーションを行うことはもちろん、精神的な面での援助もしなくてはならないとすれば、その作業をおこなう者の人格的な成長度というものが、かなりの部分で問われることになると思われます。
相対する患者さんは実にさまざまです。このさまざまな方々に対して作業療法士の行う援助も、当然、多岐に渡るものと考えられます。ことに厄介なのは、人の心の問題であります。強圧的で命令的な、また専門家として上から押し付けるような文言では、相手が怯んでしまいます。そこには必ず患者さんからの共感と納得があって初めて、作業療法士の行う励ましと援助がその功を奏するからです。
そうだとすれば、そこで問われるのは、その作業に従事する人の人柄というものです。いかに資格があろうが、知識技術が十分であろうとも、その肝心の人物が不向きであるとすれば、猫に小判に過ぎません。弱い立場の人の役に立つということは、いかにすれば、その人の目線になって物事を伺うかということに他なりません。それは、同時に他人の痛みを知る心でもあり、その心を養うという点を忘れてしまっては、本末転倒に終わりかねません。
それは、その人の生まれながらの性質とともに育った環境にもよるものです。しかし、作業療法士になるためには、人の心の痛み、苦痛を知るという訓練も知識や技術以上に大切なものであります。